編集部のコラム

薬物とか言われてるけど、実際のところ大麻ってなに?

2019.06.06
written by HEMP Magazines Japan

大麻ってなんだろうか?みなさんは一度くらいは聞いたことがあるのではないだろうか?

きっと、中学や高校の保健で触れたことがあるだろうか?またはワイドショーで目にしたことがあるだろうか?

見たことや聞いたことがある人は、大麻という植物が日本社会にとってどういう存在なのか、なぜ悪なのかをなんとなく知っているだろう。

しかし、もし仮に、ニュースで流れている報道内容が実はほんの一部のことで、誇大されていたり、誤った情報だとしたらどうだろうか?基本的な知識がなければ、何が正しい情報で、何が混乱を招いているのか、自分の頭で判断するのが難しい。

今回は、大麻がどんな存在なのか、どういう植物なのかをお伝えするが、読者の方にはその情報などを踏まえて自分で判断ができるようになってほしいと思っている。何においても、正しい情報を集めて自分の中で消化してみることが大切なはずだ。

大麻の呼称

大麻とひとくちに言っても、色々な名前や呼ばれ方がある。

以下のリストは、日本でいわゆる「大麻」と呼ばれているものを少し分解したものである。理解しやすくなるようトマトと比較して解説していきたい。

Cannabis sativa L.(カンナビス・サティバ・エル)
Cannabis(カンナビス)
Marijuana(マリファナ)
Hemp(ヘンプ)

Cannabis sativa L.(カンナビス・サティバ・エル)

これは大麻と呼ばれる植物の学名である。もともとはカンナビス・サティバ・インディカやカンナビス・サティバ・ルーディラスと区別される呼称。「エル」というのは、おしべとめしべの数で植物を体系化したスウェーデンのウプサラ大学のリンネ(Linnaeus)に由来している。リンネはまた、二名法を定着させた人物でもあり、「Cannabis sativa」はCannabis属のsativaを意味する。

つまり、カンナビス・サティバ・エルは大麻草をより学術的に捉える際に用いられる呼称である。

トマトだと、「Solanum lycopersicum」にあたる。たしかになんのことだかわからない。

学名を言われてもピンと来ない。

Cannabis(カンナビス)

この単語は、大麻の俗称の中では、おそらく最も大きな概念である。前述の学名の一部を引用しながら、大麻を植物として捉える「大麻草」としての意味合いが強い。英語での使われ方としては、一般的なニュアンスの植物で使われることが多い。

トマトで言えば、「トマト」にあたる。でもまだどういうトマトなのかが特定できない状態だ。

トマトと言ってもミニトマト?普通のトマト?

Marijuana(マリファナ)

大麻草の花や茎、種子、葉などを乾燥させたもので緑や灰色、茶色をしているいわゆる「乾燥大麻」を指す。よくテレビで耳にする「乾燥大麻」の英語版である。これは人間をハイにさせるTHC(テトラヒドロカンナビノール)を0.3%以上含むヘンプが乾燥され、その濃度や質はマリファナ市場での差別化の要素になっている。

近年では、アメリカでマリファナを嗜好品として楽しむことができたり、医療目的で処方箋をもらうことができる法律が成立し、未来の市場として盛り上がりを見せている。

トマトで言えば、「ドライトマト」にあたる。トマトを乾燥させたものを売る市場が拡大しているイメージを持てばわかりやすい。

トマトを干しました。

Hemp(ヘンプ)

英語では一般的に、繊維や建材、食品など「Industrial Hemp(産業用ヘンプ、産業用大麻)」と混同して使用されるケースも多い。また、「Cannabis」同様、ヘンプは「大麻」を指すが、「Cannabis」よりも広義的で大衆的なニュアンスがある。アメリカでは、2018年に改正された農業法によって、農産物としてのヘンプが合法になったため、農業としてもヘンプが語られるようになった。最近では、ヘンプから抽出され、不安や不眠症を改善したり鎮痛剤としても使えるCBD(カンナビジオール)という成分に関しても、ヘンプCBDという言われ方をするくらいだ。

医療用マリファナとCBDは、体内に摂取するなどの点で、感覚的には似ているかもしれないがそうではない。その中身は人間をハイにさせる成分であるTHCと、そうではない治癒成分のCBDという2種類の異なる成分であり、混同するべきではない。CBDは一般的にオイルと呼ばれ、液体を経口摂取することでその薬効を期待できる。


また、ヘンプにも種類があることを知っておく必要がある。先述したようなTHC濃度が0.3%以上のものもあれば、それ未満のものもあり、いわゆる「品種」の概念である。ヘンプと聞き、一概にハイになることを想像することは少し未熟な思考であろう。


トマトで言えば、「ミニトマトや種無しトマト」のような品種の概念にあたる。完全に余談だが、例えば、もしトマトに含まれる成分であるリコピンが向精神成分だとされていて、リコピン濃度でトマトを規制するべきか否か判断されるとする。ヘンプの例に倣って、トマトに含まれるリコピン含有量を調べれば、0.3%以上ならリコピンハイを巻き起こすため規制対象なのか、0.3%未満であれば合法トマトなのかがわかる。ヘンプはまさに今、①それが毒性があるか(THCが0.3%未満か否か)②ないのに規制対象なのかという議論がされている、その渦中にある。

トマトで言えば、「普通のトマトやミニトマト、種無しトマト」のような品種の概念にあたる。

このように、日本語の「大麻」が指す英語は、紹介しただけでも何種類かある。日本語だけだと「大麻」の一語で片付けられてしまうことも、英語で見てみると色々な単語が存在していることに気づく。

言葉というのは共通のコミュニティや認識で発生するものである。したがって、単語の数だけコミュニティあるいは概念があるとも言えるかもしれない。実際、大麻やマリファナを指す英単語は他にもある。hashish(ハシシ・ハシッシュ)やpot(ポット)など、マリファナのように「楽しむ」目的になると様々な言い換えがある。日本でもそのような言い換えはある。

実際、Twitterで「手押し・野菜」と調べると、たくさんのツイートを確認できる。マリファナは日本のアンダーグラウンドな世界では「野菜」などの隠語で表現されるのだ。そして、そこにはコミュニティがあるにちがいない。しかしそれらは、決して日本では合法的な大麻を指す言葉ではないことはここに記しておきたい。

日本における「大麻」

日本でよく耳にする大麻という単語が意味するのは、国によっては嗜好品やドラッグだったりする「マリファナ」のことを指す。そして、日本では、「違法大麻」と訳される。日本で「大麻=薬物」の概念が生まれている原因もここにあるのかもしれない。合法なものより違法なものにフォーカスが当たってしまうのは、よくある話だろう。ましてや芸能人が使用したとなれば、メディアにとって格好の餌食である。

でも最近、大麻から連想するのは薬物だけではなくなってきている。日本におけるもう1つの大麻は、衣料品や建築資材、紙など、産業利用を目的に使用される「ヘンプ」だ。身近なもので言えば、繊維として衣料品に使われることが多い。最近では、Patagoniaなどによる大手のプロモーションも活発になってきている。

衣料品関連の話では、日本には、大麻よりもっと馴染みの深い「麻」という単語があるが、これは植物の茎からできる繊維の総称として使われることが多い。麻には黄麻(ジュート)、苧麻(ラミー)、亜麻(リネン)、洋麻(ケナフ)、大麻(ヘンプ)などの種類がある。日本でよく使われる麻は、リネンやラミー、ヘンプだ。ヘンプを日本語に訳せば「大麻」である。しかし、繊維の例にあるように、大麻は一概にドラッグとされている植物ではなく、産業用大麻のように無毒な植物も指すことがわかる。

ヘンプは違法じゃないの?

産業に用いられるヘンプもマリファナと同じ大麻だとすれば、日本では違法なのだろうか、そういった疑問が生まれるのは当然である。

そして答えは、「違法」である。

日本では現在、たとえ産業用だとしても、葉や根など植物そのものを所持することは断固として違法なのだ。また発芽可能な種子も、それに繋がるため事実上違法だ。たとえそれがハイになるTHCを0.3%未満しか含んでいないとしても違法だ。ここで1回記憶を引っ張り出してもらうと、つまり、本当はドライトマトやリコピンハイを引き起こすトマトが規制対象なのに、おいしい一般的なトマトが違法なトマトと一緒くたにされ、違法とされてしまっているということだ。

しかし、実は、その事実とは裏腹に、大麻は伝統芸能や伝統のあるスポーツ、皇室も絡む神事など、古くから受け継がれてきた分野においてその象徴として存在する。横綱のまわし、天皇陛下が即位する際に着用する麁服(あらたえ)、伊勢神宮のしめ縄など、私たちが知らないだけで積極的に使われている。

大麻を取り巻くもの

今日の日本における大麻やヘンプは、歴史や法律、教育が絡み形成されてきたと考えられている。ある1面を語る時、何面も紹介する必要があることもある。それくらい複雑でさまざまな要素が絡んでいる。しかし同時に面白い。この植物はこれから地球規模で活かしていける可能性を持っている。もっともっとフィーチャしないといけないことがたくさんある。それは追って紹介していければと思う。お楽しみに。

これからを生きるために

最後に話は変わるが、コラム初号として書いておきたいことがある。

今後も、あなたにとって知らなかったことがたくさんあったり、人によっては疑わしく思ったりするかもしれない。だけど、それでよい。そこにこのメディアの意義がある。

今日、世界で言われている大麻の環境価値や薬効などは、知っている人は知っているし、知らない人は全く知らない。知らない人にとっては他人事のようで、知っている人は自分にも関係があるかもしれないと考えさせられる、そんなトピックである。けれども、その対象の本質ではないようなもの、例えば法律や既成概念、通説、常識など、そのものに結びつかない外的な要因をどこまで支持するのかは、結局のところそれぞれの人にかかっている。そしてそのひとつひとつの考え方や意見がその先の世界をよりよくしていくための要素になっていくのだと思う。

この先、日本がどう動くかはわからない。もしかしたら、30年後に大麻栽培が合法になるかもしれないし、3年後に政権が変わって総理大臣が変わったら、合法化に向け動き出すこともあるかもしれない。自分たちの生きる環境は日本だけがすべてではない。このトピックは、世界がどう動いているのか、日本がこれからどうなるのかを考える1つのいいきっかけかもしれない。

維持するべきもの、変えていくべきもの、必要なもの、捨てるべきもの、「現在」は通過点であり、正解ではない気がする。まだまだ考えることはあって、まだまだ変えていけることがある。

大麻というトピックに限らず、何が本当に良くて、何が無駄で必要なくて、何が邪魔しているのか、これを見極める力はこの先必要になっていくだろう。近い未来にその判断をできるように、まずは大枠を掴むこと、知らなかったことを知ることが大事だと思う。

「大麻」というトピックを介して、そんなきっかけを与えられれば当メディアが存在する意味がある。


この記事は HEMP Magazines Japan のオリジナルコンテンツです。
参考: https://agri-biz.jp/item/detail/7658